10個以上のプロダクト開発から導き出した答え。ヤフーで出会った二人が「microCMS」を開発するまで
人事担当の中谷祐介が、社内のさまざまなチームとそこで働くメンバーにスポットを当て、それぞれの役割や働き方について詳しくご紹介するこのシリーズ。
今回は、CEOの松田承一さんとCXOの柴田和祈さんに、前後編にわたってお話をうかがいました。
2017年にmicroCMSの前身となる会社を創業した二人。前編となる今回は、創業に至るまでの経緯と、創業してからの苦労、microCMSの開発に着手したきっかけについて語っていただきました。ぜひご一読ください!
はじめての出会いはダンス!? 二人が起業に至るまで
――まずはお二人が起業するまでの経歴を改めて教えていただきたいです。
松田:
2012年にヤフー株式会社(当時)に入社して、エンジニアとして主にAndroidアプリの開発を担当していました。最初はツール系のアプリや、ヤフーブラウザやメモリ最適化のツールを作っていました。
ヤフーには5年ほど在籍し、その後、創業準備として別のスタートアップでの勤務や大学の非常勤講師を経て、起業しました。
柴田:
僕も松田くんと同じくヤフーに入社しました。松田くんとは同期なんです。僕はデザイナーとして広告部署での業務を担当していて、特に広告の入稿ツールの開発が中心で、フロントエンドエンジニア的な役割を担っていました。
その一方で、松田くんや何人かの同期とプライベートで開発していたんです。この活動がきっかけで「一緒に起業するのもありかな」と思うようになったんですよね。
ーーお二人は同期だったということですが、最初に出会ったときのこと覚えていますか。
柴田:
ヤフーに入社後、同期全員でダンス企画をする機会があったんですけど、そのときに松田くんと初めて話したのを覚えています。僕はダンス経験者なので、振り付けを担当していたんですよね。
松田:
柴田くんに踊らされたのを覚えています(笑)。
柴田:
その後、ヤフーで働きながらプライベートで開発する機会があって、そこで松田くんと本格的に関わるようになりました。二人とも開発が好きだったんですよね。当時は松田くんがAndroidアプリの開発を、僕がデザインを担当していたんです。
松田:
僕と、現在microCMSでCPOを務める平松(亮介)くんと一緒にプライベートで開発を進めていたんですけど、あるときデザイン面で力を貸してくれる人が必要だと感じたことがあって。そこで真っ先に柴田くんの名前が挙がったんです。
柴田くんは、デザインも開発もダンスもできるし、話しやすい(笑)。それに何より実力も高い人だという印象を持っていました。
柴田:
僕は、同期の中でも松田くんと平松くんはそれぞれAndroidのプロとiOSのプロだという印象を持っていたんです。そんな二人と一緒に開発できるのは楽しかったですね。
起業時に決めたルールは「給与水準を維持すること」「無理して働かないこと」
ーーその後、どういった経緯で起業の道に進むことになったのでしょうか。
松田:
僕はもともと起業をしたかったんです。29歳で創業したのですが「20代のうちに何かを成し遂げたい」という思いを持っていたんですよね。プライベートで開発したプロダクトでは収益化には至りませんでしたが、プロダクトを形にして、課題を解決する力には自信を持てました。
柴田:
僕は松田くんとは逆で、起業を全く考えていなかったんです。ただ、松田くんがTechCrunchのイベントレポートの記事を見せてくれて、初めてスタートアップの世界に興味を持ったんですよね。
ちょうど当時、自分の働き方に対してモヤモヤしていた時期でもあり、「プライベートで開発したものをお金に変えてみたい」という気持ちもあったので、松田くんの話に魅かれて一緒に起業する道を選びました。
ーー実際に起業に向けて、お二人の中で決めたルールや方針は何かありましたか。
松田:
「ヤフー時代と同じ給料を維持する」ということですね。収入が不安定になると生活に影響するので、融資や投資を活用して最低限の収入を確保したんです。「無理をしない働き方をすること」も決めましたね。
柴田:
当時、僕たちはそれぞれすでに結婚していて子どももいたので、このルールができたんですよね。仕事よりも家族優先という考え方でしたね。
松田:
起業したてのときでも土日は働いたことないです。
柴田:
平日も18時には仕事を切り上げていましたね。スタートアップらしくない働き方かもしれないけど(笑)。
松田:
僕たちがヤフー出身だったというのも大きいかもしれないですね。IT系企業の中でも“ホワイト企業”として有名なヤフーの文化に影響を受けている部分もあると思います。
ヘッドレスCMS開発に至った意外なきっかけ
ーー起業後、どうやってプロダクトを開発していったのでしょうか。
松田:
2017年9月に創業した当時はMeyasubaco株式会社という社名でした。オンラインで簡単にアンケートやヒアリングできるツールを開発したんですけど、なかなか導入が進まないため、未来が見える感じがしなくて早い段階で終了を決断したんです。
その後、2018年1月にウォンタ株式会社に変更し、「ウォンタ」というサービスをリリースしました。Q&Aサービスや投げ銭アプリ、タスク管理ツールなど、とにかくさまざまなプロダクトを開発しました。起業して最初の1年で10個以上のサービスを開発したんじゃないかな。
柴田:
作業の進め方としては、アイデアを思いついたらすぐにランディングページ(LP)を作るんです。そして、そのLPを広告やSNSで拡散して、事前登録フォームを設置して反応を確認します。反応が良ければ本格的に開発を始める、という流れでしたね。
――収益につながるプロダクトをなかなか生み出せなかった中で、つらかったことはありますか。
柴田:
「Osushi」という投げ銭サービスで炎上したことですね。LPからの登録数が多かったこともあり、2週間ぐらいで開発を終えてリリースしたんです。ただ、焦ってリリースしたために、細かい点で認識が甘かったこともあり、法務面やセキュリティ面で多数のご指摘をいただくことになってしまいました。SNSではいわゆる炎上状態になってしまって、ヤフトピにまで掲載されるくらい大きなニュースになってしまったんです。本当に深く反省しました。
プロダクトで失った信用はプロダクトで取り返すしかないと思い、その後はプロダクトの作り込みにもこだわり、ひたすら開発を続けましたね。
松田:
あとは、創業から2年目に入った頃、資金が尽きかけたんですよね。自分たちの資金を確保するために、受託開発を始めることにしたのも苦渋の決断でした。
――そういう状況の中でも仲たがいすることはなかったのでしょうか。
柴田:
もめることは今に至るまでほとんどないですね。当時もお金がないからと辞めるつもりはなかったし、「二人でやり続けよう」という感じでした。
松田:
柴田くんともめたことは本当に記憶がなくって。プライベートでも一緒に開発していて、お互いのことが分かったうえで創業に至っているというのも大きいかもしれませんね。
ーーそういった中で、どうしてmicroCMSの開発に至ったのでしょうか。
松田:
資金繰りのために始めた受託開発を通じて、microCMSを開発するヒントを得ることができたんです。
受託開発していると、アプリやウェブの見た目を作るのは数日でできるのに、裏側の仕組みを作るのに何か月もかかるという課題を感じたんですよね。これを解決できる何かが必要だと考えたのがきっかけです。
調べているうちに、海外では「ヘッドレスCMS」という分野がすでに存在していることを知りました。しかし、日本ではまだ認知されていなくて、その可能性を感じたんです。そこで、すでに存在している海外製品を参考に開発を進めました。
柴田:
これまでのように、まずLPを公開して反応を見ることにしたんです。そしたら、LP公開時から大きな反響があって、これはニーズがあるんだなと。そこでmicroCMSの開発を進めることにしました。
――どうして「micro(マイクロ)」という名称にしたのですか。
松田:
見た目がないヘッドレスCMSの特徴から「ちっちゃくなっている」というイメージで名付けました。サイトの一部分だけを差し替えるような「ちょっとだけ使うCMS」という意味合いも込めています。
ーー2019年9月にサービスローンチしましたが、ローンチ後の反響はいかがでしたか。
柴田:
ローンチ後もエンジニアからの評判も良くて、口コミで利用者が広がっていったんです。microCMSについてツイートしてくれたり、ブログに載せてくれたりして嬉しかったですね。
松田:
リリース直後に、とある企業から問い合わせがあったのには驚きました。オフィスに呼ばれて説明しにいったときは緊張したなぁ(笑)。
実は一時期、生活の不安からストレスが溜まってしまい、突発性難聴で1週間ほど入院したこともありました。でも、「こんなところで落ち込んでいてもしょうがないから、逆にプロダクトを磨き込むことに振り切ろう」と考えたんです。だから、入院中はAPI周りの機能の開発をむしろ思い切り進めていました。やっぱりプロダクトや開発が好きなことを再認識しましたね。難聴も完治したので、結果的に良い充電期間になりました(笑)。
あと、ローンチ直後に8,500円の課金があったんです。これは本当に嬉しかった!当時、受託開発だけでかなりの額を稼いでいたんですけど、初めて自分たちのプロダクトに課金された8,500円の喜びは今も忘れられないですね。
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前編は以上です。
二人の関係性やmicroCMSが誕生するまでの紆余曲折を語った、創業者インタビュー・前編はいかがでしたか?
後編では、microCMSがどういう会社を目指しているのか、そしてプロダクトとしての今後どのような展望を持っているのかについて、引き続きCEO松田とCXO柴田に語っていただきました。後編もぜひお読みください!
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